[PDF] 歯周病患者における抗菌薬適正使用のガイドライン 2020
その後、NICEのガイドラインは2016年に、「感染性心内膜炎に対する抗菌薬の予防的投与は、日常的には推奨されない(Antibiotic prophylaxis against infective endocarditis is not recommended routinely)」と改訂されました。歯科処置を行う時に当たり前のように抗菌薬を処方することは推奨しないが、抗菌薬を予防投与すべき患者さんはおられるという事実を認めた改訂でした。
歯科治療の中で抜歯,歯周外科治療などの観血的処置を行う場合には,細菌が血中 ..
最近は状況が変わってきましたが、それでも第3世代セフェム系抗菌薬は多く使われています。ただし、日本感染症学会・日本化学療法学会の「感染症治療ガイド」(以下、ガイドライン)では、以前から歯性感染症に対する抗菌薬としてペニシリン系を第一選択薬に推奨しています。スペクトラムの広い経口第3世代セフェム系は、推奨されていません。
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抜歯術を対象として、セフカペンピボキシルとアモキシシリンの抜歯後感染発生率を比較
このような議論を踏まえて、フランス(2002年)、米国(2007年)、欧州のガイドライン(2009年)では、相次いで(中等度リスク患者には投与しない)と改められました。2008年には、英国国立医療評価機構(NICE)がさらに踏み込んで、高リスク患者・中等度リスク患者どちらに対してもことを提言しました。
英国では、NICE提言直後の5年間(2008〜2013年)に、抗菌薬の予防的処方件数は提言前の2割以下に減少し、感染性心内膜炎の発生はわずかですが統計学的に有意に増えてしまいました*1。その増加は、高リスク患者だけでなく中等度リスク患者でも認められました。
さらに、2004〜2014年の予防投与の集計*2では、第一選択薬であるアモキシシリンの処方が300万件近くありましたが死亡例は皆無で、アモキシシリンの安全性は極めて高いことがわかりました。これら2つの事実により、アモキシシリンを予防投与することの正当性が暗に示された形になりました。
そのような中、我が国のガイドライン*3では「高リスク患者に対し推奨する」「中等度リスク患者に対し提案する」と記されており、しています。感染性心内膜炎の死亡率は高く、もし発症すれば重篤な結果を招きます。抗菌薬の予防投与で救える患者さんは多くないかも知れませんが、1回の内服で感染性心内膜炎による身体的苦痛、生活への悪影響、経済的ダメージが回避できる可能性があるのならば意義があるという判断です。
7月11日に右下の親知らず(半分埋没・神経と接触)を口腔外科で抜歯しました。 ..
歯科処置後に発生する一過性の菌血症(血液中に細菌が侵入すること)は非常に高率で、抜歯後はほぼ100%発生すると言われています。歯科処置を行う時に、感染性心内膜炎の予防目的で抗菌薬を投与することが1950年代から多くの国で推奨されてきました。
しかし、抗菌薬の予防投与によって、抜歯後の菌血症の発生が減ったという報告はありますが、感染性心内膜炎の発生が減ることを直接証明した報告はありません。また、「日常の歯磨きやデンタルフロスの使用でも軽微な菌血症が日常茶飯事的に起こるので、歯科処置の時だけ抗菌薬を処方しても意味はない。それより、口腔衛生を徹底する方が重要だ」という指摘もありました。さらに、抗菌薬アレルギーなどの副作用や、抗菌薬が効かない耐性菌の発生を助長する可能性などのデメリットも心配されてきました。
治療でなく予防で使うことが多いというのは、歯科特有だと思います。歯科全体の抗菌薬使用量は医科に比べれば少なく(図1)、また予防目的なので投与期間も通常は3日前後です。ただ本当に予防が必要な人以外にも、慣習的に処方している部分があるのではないかと考えられます。予防が主なので、起炎菌を調べたりアンチバイオグラムを作成したりといったことはほとんどされません。「予防で使う」は歯科の特徴であり問題でもある、といえるでしょう。
外科処置や抜歯後の抗菌薬の投与がこれにあたります。 治療投与と ..
歯性感染症に関するガイドラインは、「JAID/JSC 感染症治療ガイド 2014」(2014 年改訂) に初めて掲載されましが、実際にはガイドラインよりも、「指導医や先輩医師に教わって、それを忠実に守っている」というパターンが多かったようです。予防が主なので、どの抗菌薬を使うかあまりこだわりはなく、慣習的・経験的に処方している部分が大きいのではないかと考えられます。
歯科の場合、抜歯や歯科の外科的処置後の感染予防を目的に、経口抗菌薬を外来で使うことが多いです。主な起炎菌は口腔連鎖球菌や嫌気性菌ですが、これらは常在菌で、普通の抜歯程度で感染症を起こすことはありません。ただ、口の中に傷をつける訳ですし、口腔内には腸内細菌も含め多くの常在菌が存在します。「何かあったら困る」というので、「広めのスペクトラムで使いやすい経口抗菌薬を、予防で入れよう」という傾向があります。
アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム(オーグメンチ ..
東京医科歯科大学病院薬剤部薬剤主任
1986年星薬科大学衛生薬学科卒業、1987年東京大学医学部附属病院薬剤部、2003年保険薬局管理薬剤師、2004年東京医科歯科大学病院(旧歯学部附属病院)薬剤部に入局し、2012年より現職。
介入2, 抜歯術後にアモキシシリン750mg/日×3日間投与群
このコーナーでは、薬剤耐性(AMR)対策のさまざまな事例をご紹介しています。第23回で取り上げるのは、東京医科歯科大学病院歯科外来における、薬剤師主導のASP(抗菌薬適正使用支援プログラム)活動についてです。同院薬剤部の沖畠里恵氏は、歯科外来で処方される経口抗菌薬の適正使用に向け、歯科医師に対するフィードバックを行ってきました。活動を始めた経緯や具体的な取り組み、またその成果について、お話を伺いました。
歯周炎の急性症状に対しては、抗菌薬を投与するが、最近のガイドラインではアモキシシリンが第1選択となっている。 ..
1つのきっかけは、国公立大学附属病院感染対策協議会のメンバーになったことです。2013年に行われた全国の歯科のサーベイランスの結果では、当院はとにかく抗菌薬の処方量が多く、全国データを引っ張るぐらいの勢いで、唖然としました。その後2015年に、当院における経口抗菌薬の使用実態を初めて調査したのですが、思った通り第3世代セフェム系抗菌薬が全体の半数近く処方されていました。そんな時に「AMR対策アクションプラン(2016-2020)」が発表されて、「これは本当に解決しなければいけない問題なのだ」と真剣に考えるようになったのです。まずは一部の診療科で介入を始め、2017年度からは全科を対象としたASP活動を本格的に開始しました。
抜歯手術後には、感染症を予防するためにアンチバイオティクスが ..
医薬品一般名:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩/dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩
抗血栓療法を受けている患者では抜歯後に確実な縫合を行う。 基本的に抗血栓薬の ..
<海外のガイドライン>
アメリカ心臓協会(AHA:American Heart Association)[文献 2]、欧州心臓病学会(ECS:European Society of Cardiology)[文献3]のガイドラインでは、歯科処置時の抗菌薬予防投与の対象症例を人工弁置換術後、感染性心内膜炎の既往例、先天性心疾患(未修復のチアノーゼ性先天性心疾患、術後 6 カ月以内)などに限定している。
アモキシシリンは、より広い抗菌スペクトルを持ち、より良い微生物浸透性を ..
歯科医師の外来処方に対して、直接フィードバックを行いました。どういう介入方法がよいのかについては、いろいろ考えました。例えば「医局会で講義する」「マニュアルを整備する」「薬剤部ニュース的なものを定期的に発行する」「感染対策委員会から周知してもらう」などです。ただ、どの方法もインパクトや実効性は薄い気がしました。それならば疑義照会のように医師に直接電話をして、個人的に話した方が早いのではないか、耳を傾けてもらえるのではないかと考えました。私は幸いにも当院に長く在籍し、面識のある先生も多かったですし、直接話した方が状況を把握していただけると思いました。
それにも関わらず、抗菌薬の予防投与は、抜歯および外科的骨切り術後の術後感染を減.
<感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン>[文献 1]
感染性心内膜炎は、的確な診断のもとで適切な治療が奏功しないと多くの合併症を引き起こし、死に至る重篤な疾患である。多くの場合、何らかの基礎心疾患を有する患者が何らかの原因により菌血症を起こした際に発症し、菌血症を来す原因の多くは歯科治療を含めた小手術である。
そのため、先天性疾患、弁膜疾患を含む感染性心内膜炎の発症が高いとされる患者には、抗菌薬の予防投与が推奨されている。ガイドラインでは、下表の抗菌薬を処置 1 時間前に内服することが推奨されている。
・下顎埋伏智歯抜歯手術・抜歯(手術部位感染リスク因子あり)→単回~48時間 ..
はい、外来処方が入力されたタイミングで、直接処方医に電話しました。コロナ禍以前は、当院における1日の平均患者数は1,600~1,800人、平均処方箋枚数は230~270枚にのぼり、処方箋の約40%にあたるおよそ100枚で抗菌薬が処方されていました。それらすべてに目を通し、院内処方に関しては問題があると思えば処方医に電話をかけて、フィードバックを行いました。
抜歯に準じて十分な量のアモキシシリンを用いてください。 歯面清掃のレベルなら必ずしも必要ありません。根管治療の場合は、初回治療では予防投与
【用法・用量】
〈ヘリコバクター・ピロリ感染を除く感染症〉
成人:アモキシシリン水和物として、通常 1 回 250 mg(力価)を 1 日 3~4 回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
〈ヘリコバクター・ピロリ感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎〉
・アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン及びプロトンポンプインヒビター併用の場合
通常、成人にはアモキシシリン水和物として 1 回 750 mg(力価)、クラリスロマイシンとして 1 回 200 mg(力価)及びプロトンポンプインヒビターの 3 剤を同時に 1 日 2 回、7 日間経口投与する。なお、クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量することができる。ただし、1 回 400 mg(力価)1 日 2 回を上限とする。
・アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン及びプロトンポンプインヒビター併用によるヘリコバクター・ピロリの除菌治療が不成功の場合
通常、成人にはアモキシシリン水和物として 1 回 750 mg(力価)、メトロニダゾールとして 1 回 250 mg 及びプロトンポンプインヒビターの 3 剤を同時に 1 日 2 回、7 日間経口投与する。
歯周病や抜歯後の感染、インプラント手術など、様々な歯科治療の場面で ..
当院は2014年から院外処方に移行し、現在はほぼ9割が院外です。院内で出すのは「抜歯前に予防抗菌薬を投与したい」、「抜歯後すぐに鎮痛薬と抗菌薬をセットで使いたい」などのケースに限られます。院外処方箋については発行された時点で直接話をすることができません。そこで、院外処方箋に対しては、電子カルテのメモ欄を利用して、文書によるフィードバックを行いました。
特徴:アモキシシリンと同様の効果を持つが、経口吸収率がやや劣る.
アモキシシリンの承認された用法・用量(ピロリ菌除菌を除く感染症:1 回 250 mg を 1 日 3~4 回、ピロリ菌除菌:1 回 750 mg を 1 日 2 回)よりも高用量(1 回 2,000 mg、1 日 1 回)で処方されている。歯科領域における適応外処方(感染性心内膜炎の予防)である可能性が考えられる。
先日抜歯を行いアモキシシリン トリキュラー を知らずに併用してしまいました。 トリキュラーは13錠目14錠目の2日間併用してしまいました。
単に「処方を変えてください」ではなく、必要に応じて薬剤選択や用法用量の提案まで行いました。問題だと思う処方が出たらカルテを開き、処置内容や患者背景などを確認しています。そのうえで、例えば、「アモキシシリンですが、ペニシリンアレルギーがあればクリンダマイシンを1回300mg、1日3回でお願いします。」、腎機能が悪ければ「ペニシリン系でお願いしたいのですが、その場合は減量してもらえますか」というように、具体的に伝えていました。
抜歯に関するお悩みを解決します。抜歯前のお悩み、抜歯後のお悩みならクローバー歯科クリニックへどうぞ。
下記の事例において、何をチェックし、具体的には何が問題であり、
疑義照会する際はどのように伝えればよいでしょうか?