例 3) 中等度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合の、遅発性の悪心・嘔吐の予防
システマティックレビューレポートに基づいて,推奨草案「中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法へのオランザピンの追加・併用を弱く推奨する。」が提示され,推奨決定の協議と投票の結果,24 名中21 名が原案に賛同し,合意形成に至った。
薬物相互作用 (27―がん化学療法における制吐剤の 薬物 ..
患者の価値観・好みについてエビデンスに基づく評価はできていないが,嘔吐抑制,悪心抑制という益は多くの患者が求めるものであり,多様性は低いと考えられる。害については少ないと考えられたが,患者のライフスタイルや価値観も考慮すべきである。
患者の価値観・好みについてエビデンスに基づく評価はできていないが,嘔吐抑制,悪心抑制という益は多くの患者が求めるものであり,多様性は低いと考えられる。害については少ないと考えられたが,患者のライフスタイルや価値観も考慮すべきである。
[PDF] 2016年04月 『抗癌剤の催吐性リスク分類と制吐療法について』
悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンの3 剤併用療法が標準となる中等度催吐性リスク抗がん薬のみを対象とした大規模比較試験による,オランザピンの追加・併用の検証が期待される。
第Ⅱ相試験1 編における評価であり,結果の解釈には注意が必要であるが,その報告における「傾眠」については,高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防におけるオランザピンを含む臨床試験で報告されている「傾眠」と同程度の頻度,重症度であり(→ 参照),オランザピン追加・併用による害は少ないことが示唆された。ただし,糖尿病患者へのオランザピン投与は本邦では禁忌であり,本CQ で採用した本邦で実施された臨床試験,では,糖尿病患者は除外されていたことに注意を要する。また,作用点が重複するドパミン(D2)受容体拮抗薬との併用は避け,睡眠薬との併用にも注意を要する。
【1 日目(急性): 5-HT3 受容体拮抗薬 + デキサメタゾン, 2 日目~(遅発性): デキサメタゾン】
ランダム化比較試験においても症例数が少なく,結果の解釈には注意が必要であるが,嘔吐抑制,悪心抑制いずれにおいてもオランザピンの追加・併用の有用性が示唆された。
ランダム化比較試験1 編では有害事象は評価されておらず,第Ⅱ相試験1 編(33 例)で評価した。オランザピンの主な副作用である傾眠(somnolence)の発現頻度は48.5%で,Grade 1/2 のみであった。
(day 1)。 シクロホスファミドやドキソルビシンなど遅発性
また,急性期,遅発期,全期間におけるオランザピン投与群のTC 割合は,オランザピン非投与群よりも有意に良好であった〔OR:急性期5.28(95%CI:1.20-23.17,p=0.045),遅発期5.95(95%CI:1.59-22.33,p=0.014),全期間4.91(95%CI:1.32-18.21,p=0.031)〕。
ランダム化比較試験1 編をもとに,「CC 割合」,「TC 割合」の2 つのアウトカムで評価した。急性期,遅発期,全期間におけるオランザピン投与群のCC 割合は,非投与群よりも有意に良好であった〔OR:急性期26.38(95%CI:1.41-493.2,p=0.004),遅発期6.33(95%CI:1.45-27.74,p=0.022),全期間7.60(95%CI:1.73-33.36,p=0.009)〕。
☆遅発性悪心・嘔吐:抗がん薬投与後 24 時間以降に発現します。 ☆突出性悪心 ..
本CQ では,中等度催吐性リスク抗がん薬による治療を受ける患者を対象に,悪心・嘔吐予防として,4 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン+オランザピン)と3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)を比較した際の「血糖上昇」「嘔吐抑制」「悪心抑制」「有害事象」「コスト(薬剤費)」の5 項目をアウトカムとして設定し,システマティックレビューを行った。
遅発性の悪心・嘔吐:投与後24時間~120時間程度持続する悪心・嘔吐
ランダム化比較試験1 編は,44 例と小規模であり,また高度催吐性リスク抗がん薬と中等度催吐性リスク抗がん薬(ネダプラチン,カルボプラチン,ダウノルビシン,その他)が混在して対象とされており(中等度催吐性リスク抗がん薬投与例:オランザピン投与群8/22 例,36.4%,オランザピン非投与群7/22 例,31.8%),結果の解釈に注意を要する。一方,第Ⅱ相試験1 編(33 例)は,カルボプラチンを含む中等度催吐性リスク抗がん薬を対象としている。
また,AC療法においてはデキサメタゾンの投与期間を短縮可能(遅発期のCR ..
高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンの3 剤併用療法にオランザピンを加えた4 剤併用療法が,NCCN ガイドライン2017,ASCO ガイドライン2017 において推奨療法として追加された。一方,中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として3 剤併用療法が推奨される場合があり(→ 参照),その際のオランザピンの追加・併用の有用性についても検証すべく本CQ を設定した。
がん治療の後、数日間服用します。 がん治療による吐き気・おう吐
高度催吐性リスク抗がん薬に準じて3 剤併用療法を行うことが推奨されるカルボプラチンのような特定の中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法にオランザピンを追加・併用する意義があるかは,臨床現場で遭遇する問題である。システマティックレビューを行い,4 剤併用療法の意義を検討した結果,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの3 剤併用療法にオランザピンを追加・併用することを弱く推奨するとした。
には、遅発性悪心・嘔吐の予防のために2~4日目にデキサメタゾン投与が提案さ
カルボプラチンを除く中等度催吐性リスク抗がん薬による治療を受ける患者を対象として,NK1 受容体拮抗薬を含む3 剤併用療法の有効性・安全性の評価についてはエビデンスが不十分である。また,新規制吐薬である選択的NK1 受容体拮抗薬のホスネツピタントは2022 年5 月に本邦で薬価収載となったが,本システマティックレビュー実施時には上市されていなかったので今回の検索の対象にはなっていない。これらのことから,カルボプラチンを除く中等度催吐性リスク抗がん薬に対するNK1 受容体拮抗薬の有用性を検証するランダム化第Ⅲ相比較試験が望まれる。
注) アプレピタントを使用しない場合は、 1日目のデキサメタゾ
システマティックレビューレポートに基づいて,推奨草案「中等度催吐性リスク抗がん薬のうち,カルボプラチンによる治療においては,悪心・嘔吐予防としてNK1 受容体拮抗薬の投与を強く推奨する。」が提示され,推奨決定の協議と投票の結果,22 名中22 名が原案に賛同し,合意形成に至った。
抗がん薬投与後、数時間以内に出現。 ▫ 遅発性下痢(腸管粘膜障害性下痢)
これらの結果は,NK1 受容体拮抗薬の作用機序や特徴を考慮すれば妥当な結果である。これらを総合すると,NK1 受容体拮抗薬を含む3 剤併用療法は悪心・嘔吐の抑制に有効と考えられる。
遅発性悪心、嘔吐:抗悪性腫瘍剤投与開始後24~120時間までに発現する悪心、嘔吐 ..
全期間と遅発期において,NK1 受容体拮抗薬を含む3 剤併用療法は有意にCR 割合,CC 割合を改善した。ただし,TC 割合については,2 剤併用療法と3 剤併用療法で有意差はなく,悪心の完全制御には課題がある。急性期のCR 割合は有意差はあるものの効果量は小さく,CC 割合およびTC 割合に有意差はなかった。
[PDF] 選択的NK1受容体拮抗型制吐剤 アプレピタントカプセル
近年,多受容体作用抗精神病薬(MARTA)であるオランザピンが,高度および中等度リスク抗がん薬による遅発期での悪心・嘔吐のコントロールに有用であるとの報告が多くなされている。わが国においても臨床試験結果が順次報告されており,欧米でのコンセンサスや,臨床的意義から2017 年6 月から標準的制吐療法に併用として使用できるようになった(→, 参照)。遅発性悪心・嘔吐の制御を行うための有効な薬剤としてわが国でのさらなる研究が期待される。
デキサメタゾンの3剤併用療法だ。 オランザピン5mgを併用すると嘔吐 ..
ランダム化比較試験は行われておらず,一般的には軽度リスク・最小度リスク抗がん薬に対して制吐薬は推奨されない(参照)。
日本語 (1)急性(0-24時間)および遅発性(24-120時間)嘔吐のCR率
カルボプラチン,オキサリプラチン以外の中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,推奨される5-HT3 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの2 剤併用療法にオランザピンを追加・併用することの意義を検討することは重要である。
化学療法を受けている、または受ける予定の小児および若年(18歳未満)の予期性、急性、および遅発 ..
以上より,個々の抗がん薬としては中等度リスクに分類されるが遅発性悪心・嘔吐が問題になるなど催吐性リスクの高いレジメンを使用する際には,NK1受容体拮抗薬を用いることを考慮する。
吐き気・嘔吐は、起こる時期によって急性、遅発性、予測性の3つに
女性は男性に比べ催吐リスクが高いことが知られている(→参照)。本邦の呼吸器領域と婦人科領域における制吐療法の第II相試験の報告では,同じカルボプラチンを用いても,アプレピタントを含む3剤制吐療法を用いた場合,全期間嘔吐完全制御割合は,呼吸器領域では8割程度であるのに対し,婦人科領域では6割程度であった。また,婦人科領域の悪性腫瘍でカルボプラチンを用いる際に,第1世代5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンのみを用いた群に比べ,これらにアプレピタントを加えた群では,「“食事や水分も摂れない強い悪心”がない」と「5日間嘔吐なし」の割合がそれぞれ有意に高かった。ただし,副次評価項目として制吐効果をみた研究であり,2,3 日目にはデキサメタゾンが用いられていないという制限がある。