[PDF] 急性単純性虫垂炎の治療 (総説)NEJM,Sept.16, 2021


近年、抗生剤の進歩により虫垂切除なしで虫垂炎を治療可能な症例、すなわち「抗生剤で散らす」ことが可能な症例も増えてきましたし、むしろ、現在では正確な画像診断・抗菌薬の進歩に伴い、単純性急性虫垂炎を緊急手術することは外科医や看護師などのマンパワーの問題などから、夜間の緊急手術は回避される傾向にもあります。


虫垂炎アップデート|札幌東徳洲会病院 救急センター 救急科専門医研修

また、手術を行うことになっても手術前後に抗生物質を用います。明らかに合併症(虫垂の破裂、膿瘍の形成、バイタルなど)がなければ、用いる抗菌薬はセファゾリンが適していると考えられています(Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition)。これを用いることで創部感染などの手術後の感染症トラブルを減らすことができます。

「たかがアッペ、されどアッペ」
“アッペ”とは虫垂炎(appendicitis)のこと
というフレーズは多くの外科医が口にし、外科手術書にも記述が残る。
虫垂炎診断や手術難易度の奥深さを象徴する言葉であります。
私が外科医として働き初めた頃(30年前)には 右下腹部痛で腹膜刺激症状(腹部を圧迫してその圧迫を解除した際に起こる激痛)があれば昼でも夜でも「即緊急手術」という指導をされてきました。
それは昭和戦前の大学病院の外科病棟の入院患者は半数以上がアッペによる腹膜炎患者であったという経験によるものです。
1935年慶應大学茂木らの報告(第36回日本外科学会宿題報告「急性虫垂炎」)によると「急性虫垂炎の死亡率0.39%は米国1.52%より低いが、腹膜炎死亡率は日本2.93%に対して米国0.16%である」と述べ、急性虫垂炎が穿孔し腹膜炎を発症した場合には極めて重篤な状態に陥り、命を失う症例が3%もあるという事実である。」という事実は、注目を浴び、腹部所見で虫垂炎の診断が付けば即手術、と言った時代背景があります。

オーグメンチン(CVA/AMPC)+アモキシシリン(AMPC)

子どもの場合も大人の急性虫垂炎の場合と同じく手術か抗生物質治療を行います。

急性虫垂炎に対して手術を行わない場合は、これらの細菌に有効と考えられる抗生物質を用いることが大切です。以下が治療に用いられる抗生物質の例です。

アモキシシリン・クラブラン酸; レボフロキサシン+メトロニダゾール; シプロフロキサシン+メトロニダゾール

「急性単純性虫垂炎における抗生剤と手術は同等の有効性と安全性を示す」ことがランダム化試験(RCT)の結果をもって示された。内容:急性虫垂炎のうち穿孔性や膿瘍形成性虫垂炎などの複雑性虫垂炎は全体の20%程度であり、残りの多くの単純性虫垂炎において1年後まで症状なく経過したものは63%で手術群にくらべ合併症の相対リスクが31%減少するということであった。しかしながら、抗生剤初期治療に成功した群でも約40%は1年後までに何らかの症状が再燃し、20%は再入院となり手術が必要であった。再入院になった症例のうち穿孔や膿瘍形成などの複雑性虫垂炎に進展していたものは21%にのぼっていた。

単純性急性虫垂炎に対する非手術治療と虫垂切除術の有効性および安全性を検証した報告で、成人患者で非手術治療と虫垂切除術を比較した無作為臨床試験8件(1504研究の中から厳選)をまとめて解析した論文で系統的レビューと言います。
(結果)
手術群と非手術群の30日後の治療成功率に有意差を認めませんでした
手術群と非手術群の30日後における有害事象の発生率に有意差を認めませんでした

しかしながら
非手術群では
入院期間が手術群より有意に長い
虫垂炎の再燃が18%
が認められました。

このような処方を受け付けた場合、どのような対応をしますでしょうか? いずれも抗菌薬です。 成分をみてみましょう

これらが急性虫垂炎の原因となる主な細菌です。また、件数は少ないですが、やエルシニアという細菌も急性虫垂炎を起こすことがあると言われています。

単純性虫垂炎に対して保存的加療の成功率は手術と同程度の成功率ですが、入院期間が長くなり、18%程度で再燃するということになります。


なおこの総説によると Ampicillin-sulbactam(ユナシン S)や amoxicillin-clavulanate

に対して抗生物質を用いるとき、感染の原因となっているに有効なものを用いる必要があります。そのため、急性虫垂炎の原因となる細菌を見定めなければなりません。急性虫垂炎は腸の中で起こる感染ですので、腸の中にいる細菌が起炎菌となります。例を挙げます。

医療用医薬品 : サワシリン (サワシリンカプセル125 他)

合併症をもたない急性虫垂炎は抗生物質による治療も有力な選択肢です。合併症とは虫垂に穴があいていたりの溜まりがあることです。

※1 サワシリン®ならびにそのジェネリック医薬品、クラバモックス®、オーグメンチン®は、

現在の治療法として、外科手術によって虫垂を取り除く方法(虫垂切除術)または、薬剤によって炎症を抑える方法(抗菌薬治療)があること、外科手術には開腹手術と腹腔鏡下手術があることを情報共有します。

2023 年 7 ⽉から全国的に供給制限状態である。 Page 2

合併症のない急性虫垂炎のうち約70%の人は抗生物質を使って根治することができます。一方で約30%の人は抗生物質の効果が弱く治療が不成功となり手術が必要になります。

[PDF] 複合抗生物質製剤 クラブラン酸カリウム・アモキシシリン水和物錠

例えば、虫垂が腫れ上がり破裂するリスクがあると考えられる場合には手術を選ぶことになりますし、入院することができない状況で軽症の急性虫垂炎であれば飲み薬の抗生物質を用いて治療することも可能です。

通常成人は、1回1錠、1日3~4回を6~8時間毎に経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。 8

急性虫垂炎が再発すると腹痛などの症状が現れます。抗生物質による治療後の再発率はどのくらいなのでしょうか。

【急性虫垂炎に対する手術と抗生物質治療の比較】

虫垂炎について、患者さまからいただいた質問を集めました。ここで解決できないことはお気軽に質問ください。

合併症のない急性虫垂炎には抗菌薬より切除術

虫垂は、通常右下腹部にあり、大腸の始まり部分の盲腸にぶら下がっている小指くらいの腸のことです。
虫垂炎は、この虫垂の内部で細菌が増殖して炎症が起こった状態です。
典型的な症状は「最初胃(みぞおち)の辺りが痛くなり、その後徐々に右下腹部に痛みが移動、吐き気や発熱が起こってきた」といったものです。
重症化すると虫垂の壁が破れて穴が開くことがあり、これを「穿孔性虫垂炎」といいます。虫垂が穿孔すると溜まっていた便や膿が腹腔内にもれて腹膜炎などの合併症を起こし、重篤化することがあります。
急性虫垂炎は急性腹症(最後にまとめ)の中で内科、外科を問わずに日常的に遭遇しうる頻度の高い疾患であり、その生涯罹患率は7-14%と、権威のあるジャーナルの文献(Flum DR : Clinical practice; Acute appendicitis; appendectomy or the “antibiotics first” strategy. N Engl J Med. 2015; 372 : 1937-1943 )が記しています。
10~20歳代に最も多く、加齢に伴い減少していくとされてきましたが、最近は高齢化の進行に伴い、高齢者症例が増加しており、しばしば腹膜炎による重篤化を認め、私が非常勤として勤務する急性期病院では集中治療を要する症例も認めます。

急性虫垂炎

ここで本邦における虫垂炎手術症例数の推移を示すデータを示します。
非常に興味深い現象が新型コロナ感染症の結果読み取ることができますので、私の分析をまじえ、説明します。

急性虫垂炎について | 浜の町病院

急性虫垂炎が再発した場合、最初の治療と同様に手術か抗生物質による治療を選ぶことになります。急性虫垂炎が再発した場合の治療はデータが少ないので手術と抗生物質の優劣をつけることは難しくその状況により適切な治療法も変わります。

急性虫垂炎に対する抗生物質治療 vs

急性虫垂炎に対しては手術が治療の基本になります。感染を起こしている虫垂を切除して感染源を排除することが目的です。一方で、抗生物質(抗菌薬、抗生剤)を用いた治療も有力です。俗に「散らす」と呼ばれるもので、抗生物質が感染を抑えることを期待した治療です。

昨日再再発で、虫垂炎で病院へ行きました。入院、手術はせず

例えば再発したとき虫垂に穴があいているまたは穴が開く可能性が高い場合には基本的に手術を勧められることが多いと思います。一方で前回と同様に軽症であれば手術をしなくとも治る見込みがあると言われるかもしれません。この場合は手術と抗生物質のどちらでも選ぶことができます。

知って得する病気の話_急性虫垂炎とは(外科)

急性虫垂炎に対して手術を行うことが多いですが、(抗生剤、)を用いた治療も有力です。ただし、抗生物質を用いた場合、治療後に再発することがあります。再発後の治療と合わせて説明します。

急性虫垂炎にはまず抗菌薬投与が主流に(4ページ目)

急性虫垂炎を薬で散らした後には食事などに気を配りできるだけ腸に負担をかけないようにすることを心がけましょう。

【急性虫垂炎の治療】 そして虫垂に感染した細菌に対して抗生物質(細菌を殺す薬剤)の点滴を1日に2~3回定期的に投与して治療します。 治療効果が現れ、炎症の所見が軽くなってくればそのまま症状が治まるまで治療を継続します。 おおむね5日から10日程度の入院を要します。

本邦では年間50,000症例以上の虫垂炎が手術されていますが、大部分の症例は急性虫垂炎で緊急入院の症例です。
ここ数年の大きな傾向としては開腹手術が減少(41.4%→29.4%)し、腹腔鏡手術が増加(58.5%→70.3%)していることです。また2019年度から腹腔鏡手術による『日帰り手術』が始まったことです。
腹部CT検査による術前診断の精度が上がったこと、傷が小さな低侵襲手術である腹腔鏡手術が普及したこと、また今回紹介したような権威あるジャーナルが認めた『科学的根拠のある治療法』として、『虫垂炎=手術』ではなく、『抗菌薬治療による治療』が実施できることがわかり、症例によっては患者さんの時間のロスが少なくなります。
そこで上の表をみてください。虫垂炎に罹患する人数が急に減少することなどありえませんので、2020年にも50,000人以上の方が虫垂炎を患ったはずです。
手術症例が減ったのは新型コロナ感染症の影響なのです。『不要不急の入院』をさせることができなかった病院は『虫垂炎=手術』ではなく、『抗菌薬治療による治療』を選択したのです。
その結果、腹膜炎が増えたなど、全くありませんでした。新型コロナ感染症を経験した結果、『科学的根拠のある治療法』として『抗菌薬治療による治療』が実施できることが身をもって経験することができたのです。
ただし、ここからが大事なところです。
『抗菌薬治療による治療』で改善した中の20-40%が再燃するので、患者にそのことを説明して、希望される方には手術を提案するべきではないでしょうか?
災害・戦争などで経験したことを生かして復興した日本です。
『日帰り手術』を普及することで医療経済の崩壊を食い止め、子どもたちへの負の遺産を少しでも軽減することにご協力ください。