[PDF] 選択的NK1受容体拮抗型制吐剤 注射用ホスアプレピタントメグルミン
NK1受容体拮抗薬であるアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾン9.9 mg 静注(12 mg 経口)の3 剤併用が推奨される。第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの2 剤併用に比べ,アプレピタントを加えた3 剤を併用することで制吐作用の著しい改善が示されている~。第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬(→ 参照)は,単剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,薬剤間またその投与経路によって効果に大きな差はなく,用量や投与回数の影響を受けないことから,抗がん薬投与開始前に必要量を単回投与とする。第2 世代5-HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンは,単剤間の直接比較およびデキサメタゾン併用下での比較において,急性嘔吐の予防効果は他薬剤と同等であるが,遅発性嘔吐の予防において優れている(→ 参照)。デキサメタゾンの用量(→ 参照)については,第1 世代の5-HT3受容体拮抗薬との2 剤併用では13.2~16.5 mg を静注(16~20 mg を経口)とされてきたが,アプレピタントとの併用では,アプレピタントがCYP3A4 を阻害することによりデキサメタゾンの濃度-時間曲線下面積(area under the concentration-time curve; AUC)が増加するため,3 剤併用では9.9 mg 静注(12 mg 経口)に減量する。ただし,副腎皮質ステロイドが抗がん薬として投与されるCHOP 療法などではレジメン内のステロイドは減量してはならない。アプレピタントの投与期間は3 日間が推奨される。ホスアプレピタントはアプレピタントの水溶性を向上させたリン酸化プロドラッグであり,静脈内投与後に体内の脱リン酸化酵素によって速やかに活性本体であるアプレピタントに変換される。ホスアプレピタントはオンダンセトロン,デキサメタゾンとの3 剤併用でアプレピタントとの同等性が示されており,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下での抗がん薬投与30 分前,150 mg の単回使用が推奨される。ただし,副作用として注射部位痛/発赤/血栓性静脈炎の頻度が高いことに留意すべきである。
アプレピタントとの併用時にはデキサメタゾンを減量することを推奨し
がん薬物療法により誘発される悪心・嘔吐の発現頻度は,使用する抗がん薬の催吐性によって規定される。本ガイドラインでは,海外の制吐療法ガイドラインと同様に,種々の臨床試験で示された催吐性を考慮し,制吐薬の予防的投与がない状態で抗がん薬投与後24時間以内に発現する嘔吐の割合に従って以下の4 つに定義した。
催吐性は抗がん薬の種類,投与量,併用抗がん薬によって異なり,本ガイドラインでは に示すようなリスク分類を行っている。ほとんどの薬剤は単剤での分類となっているが,乳がん領域で多く使用されるアントラサイクリン系抗がん薬とシクロホスファミドはともに中等度催吐性リスク抗がん薬であるが,両者を併用する場合は高度催吐性リスクに分類している。また,多くのがん薬物療法では多剤併用療法が用いられており,使用薬剤の中で最も高い催吐性リスクの抗がん薬に合わせた制吐療法が推奨される。具体的には,原発臓器別の治療レジメン一覧(→ 参照)を参考としていただきたい。また,新規抗がん薬を検証する臨床試験においては,ガイドラインで推奨する制吐療法と異なる制吐療法が使用されることもあるが,その新規抗がん薬を投与する際には臨床試験で用いた制吐療法を行うことは許容される。
ている。経口投与の場合は、初回通過代謝を考慮し、特に薬物相互作用に
また,悪心・嘔吐の発現時期や状態により,以下の定義があり,機序や背景を考慮した制吐療法が行われている。
がん薬物療法で使用する基本的な制吐薬には5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾン,オランザピンの4 剤があり,これらを催吐性リスクによって使い分ける。催吐性リスクに応じた適切な制吐療法を行っているか,制吐療法実施のための体制が整備されているかは,重要な施設評価のポイントとなり得るので,施設全体で取り組む必要がある。
NK-1 RA の一つとして知られるフォスアプレピタントは、デキサメタゾンと併用した場合、第 ..
また,制吐療法以外の支持療法や併存症に対する治療薬を併用している場合も多く,薬物相互作用によるそれぞれの薬効の変化も考慮した薬剤選択や用量調整が必要である。
経口抗がん薬による催吐性リスクについては に示す。経口抗がん薬は近年,数多く製造販売承認されており,悪心・嘔吐を含む有害事象の情報を集めたうえで適切な制吐療法を行う。
薬剤師のためのBasic Evidence(制吐療法) | 日医工株式会社
臨床試験では抗がん薬による悪心・嘔吐の評価方法として,主に有害事象共通用語規準(CTCAE:Common Terminology Criteria for Adverse Events)が用いられているが,その評価は医療従事者側の評価であって患者自身の主観的な評価ではないことに注意する必要がある。また,抗がん薬投与開始後,急性期(0~24 時間),遅発期(24~120 時間),全期間(0~120 時間)の悪心・嘔吐の評価方法()が臨床試験で用いられてきたが,医療従事者による過小評価の問題等,評価の妥当性は十分とはいえず,患者自身による正確な評価方法の開発が重要になっている(→ 参照)。近年は電子デバイスを用いた患者自身による症状評価(ePRO:electronic patient-reported outcome)を用いた「制吐療法の研究」が行われるようになっており,実臨床への導入に向けた取り組みが進んでいる。
悪心・嘔吐が起こるメカニズムを に示す。上部消化管に優位に存在するセロトニン3(5-HT3:5-hydroxytryptamine 3)受容体と第4 脳室最後野の化学受容体引金帯に存在するニューロキニン1(NK1:neurokinin 1)受容体が複合的に刺激され,最終的に延髄の嘔吐中枢が興奮し,遠心的な臓器反応が起こることで悪心・嘔吐が引き起こされると考えられている。化学受容体で作用する神経伝達物質としては,セロトニン,サブスタンスP,ドパミン,ヒスタミン,アセチルコリン-ムスカリンなどが知られており,これらの化学受容体と拮抗する薬剤が制吐薬として用いられている。
合 デキサメタゾン 8mg) + (アプレピタント使用の場合:アプレピタント 80mg Day2,3) ..
予防的制吐療法に用いられる制吐薬は,急性期に有効な5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾン,遅発期に有効なNK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンである。また,かつて制吐目的に適応外使用されていた非定型抗精神病薬のオランザピンが,公知申請を経て,2017 年に本邦でのみ,「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心,嘔吐)」に対して保険適用になり,急性期・遅発期ともに有効な新たな制吐薬として使用可能になった。抗がん薬の催吐性リスクに応じて,これら制吐薬の組み合わせ,投与期間,投与量が決められている(→参照)。
き CINV 治療を減弱すること(ステロイドの減量等)は推奨できない。
抗がん薬投与後,24 時間以内に出現する急性嘔吐は,抗がん薬の治療アドヒアランスを妨げる最も大きな要因の一つであり,その予防制吐効果の成否は遅発性嘔吐の治療効果にも影響を及ぼす。したがって,特に催吐性リスクが高度および中等度の抗がん薬投与に際しては,急性嘔吐を未然に防ぎ,さらに遅発性嘔吐の治療反応性を良好に保つためにも,積極的な制吐薬の投与を行う必要がある。以下に急性嘔吐の予防を目的として,抗がん薬投与前に行うべき対処を催吐性リスク別に概説する。
減量するなど慎重に行うこと。離脱症状があらわれた場合には、直ちに再投与又は ..
今版における改訂のポイントは,国内外のランダム化第Ⅱ・Ⅲ相比較試験により,高度および中等度催吐性リスク抗がん薬に対して,オランザピンを含む予防的制吐療法が開発されたこと(→,, 参照),遅発期のデキサメタゾン投与省略のエビデンスが示されたこと(→, 参照),中等度催吐性リスク抗がん薬に対するNK1 受容体拮抗薬の予防的投与について新しいエビデンスが示されたこと(→ 参照),である。
そのため、併用にさいしてはデキサメタゾンを減量するなどその用量に配慮が必要です。
前版までに掲載されたエビデンスにこれらの新しいエビデンスを加え,推奨される制吐療法の基本情報を抗がん薬の催吐性リスク別に解説した(→ 参照)。
[PDF] 2016年04月 『抗癌剤の催吐性リスク分類と制吐療法について』
高度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法は,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンの3 剤併用療法であったが,オランザピンを含む4 剤併用療法が3 剤併用療法よりも有意に急性期と遅発期の悪心・嘔吐を抑制することがランダム化第Ⅲ相比較試験で示され,オランザピンを含む4 剤併用療法が標準的な予防的制吐療法として新たに加わった(→, 参照)。ただし,オランザピンは本邦では糖尿病患者には禁忌(海外では慎重投与)であり,臨床試験では75 歳以上の後期高齢者における使用実績がないため,オランザピンの併用については患者ごとに適応を検討する必要がある。
NK, 受容体拮抗薬: アプレピタントカプセル / ホスアプレピタント注、 ..
また,AC 療法においてはデキサメタゾンの投与期間を短縮可能(遅発期のCR 割合における3 日間投与に対する1 日目のみ投与の非劣性)というエビデンスが示されたが,AC 療法以外の高度催吐性リスク抗がん薬ではエビデンスがないことに注意する(→ 参照)。
5-HT3 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンを投与し,2~4 日目にデキサメタゾンを投与)に
抗がん薬の催吐性リスクは,高度,中等度,軽度,最小度の4 段階に分類される。良好な治療アドヒアランスを得て,がん治療を円滑に進めるためにも,催吐性リスクの適正な評価と個々の症例に応じた予防的対処を行う必要がある。
[PDF] CINVについて (制吐薬適正使用ガイドラインの変更点を含めて)
オランザピンを用いない3 剤併用療法を行う場合やデキサメタゾンの投与期間を短縮する場合の5-HT3 受容体拮抗薬の選択は,遅発期悪心・嘔吐に対して第1 世代よりも有効性の高い第2 世代のパロノセトロンを優先する(→ 参照)。
今まで院外処方していたday2以降のアプレピタントが不要になります。 ..
R±CHOP 療法は高度催吐性に相当するレジメンであるが,高用量のプレドニゾロンが抗がん薬として使用されることから,5-HT3 受容体拮抗薬とプレドニゾロンの2 剤をもってR±CHOP 療法に対する制吐療法とされてきた経緯があったため,R±CHOP 療法に対するNK1 受容体拮抗薬投与の妥当性について で解説した。
アプレピタント125mg, パロノセトロン0.75mg, デキサメタゾン9.9mg ..
中等度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法は,5-HT3 受容体拮抗薬,デキサメタゾンの2 剤併用療法である。一方,中等度催吐性リスク抗がん薬のうち,カルボプラチン(AUC≧4)を含む治療レジメンにおいては,NK1 受容体拮抗薬の追加投与が有意に制吐効果を高めることが複数のランダム化比較試験やシステマティックレビュー・メタアナリシスで示されており,NK1 受容体拮抗薬を含む3 剤併用療法が標準制吐療法である(→, 参照)。AUC<4 のカルボプラチンやカルボプラチン以外の中等度催吐性リスク抗がん薬に対するNK1 受容体拮抗薬の追加投与の有用性は確立していないため,抗がん薬の種類,多剤併用療法における抗がん薬の組み合わせ,患者背景や症状によってNK1 受容体拮抗薬追加の適否を検討する。
減量すること〔10.2、16.7.5、17.1.1−17.1.3参照〕; 7.2. 本剤は、投与速度の ..
「悪心」は“嘔吐しそうな不快な感じ”と定義され,延髄の嘔吐中枢に向かう求心性迷走神経刺激により発現する。「嘔吐」は“胃内容の強制排出運動”と定義され,胃幽門部は閉ざされたうえで,下部食道括約筋の弛緩,横隔膜や腹筋の収縮により,胃内容が排出される。なお「空嘔吐」は“胃内容は排出されないが,強制的に排出しようとする運動”と定義される,。これら嘔吐中枢への入力刺激としては大脳皮質(頭蓋内圧亢進,腫瘍,血管病変,精神・感情など),化学受容体(代謝物,ホルモン,薬物,毒素など),前庭器(姿勢,回転運動,前庭病変など),末梢(咽頭-消化管・心臓・腹部臓器などの機械受容体,消化管などの化学受容体)がある。
トおよびデキサメタゾン、2) アプレピタント、3) デキサメタゾンまたは4)5-HT3 ..
5-HT3 受容体拮抗薬の選択については,2 剤併用療法の場合は第2 世代のパロノセトロンを用いることが望ましいが,3 剤併用療法の場合は第1 世代の5-HT3 受容体拮抗薬を考慮してもよい(→ 参照)。一方,デキサメタゾンの投与期間を1 日目のみに短縮する場合には,パロノセトロンを選択する(→ 参照)。
“アプレピタント 内用薬”で検索 “販売名 アプレピタント”で絞込み(部分一致 ..
NCCN ガイドライン 2015 では,アプレピタントの代わりに多受容体作用抗精神病薬(MARTA)であるオランザピンをパロノセトロンとデキサメタゾンと3 剤併用で用いるオプションが示された。さらに同2017では,新たにアプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加えるレジメンも提示された。これらは,シスプラチンとAC療法を含む高度リスク抗がん薬投与に際し,オランザピンが,パロノセトロンとデキサメタゾン併用下においてアプレピタントと同等であることが示された第Ⅲ相ランダム化比較試験や,アプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加える有用性が示された第III相ランダム化比較試験の結果を受けている。ASCO ガイドライン2017 でもオランザピンを加えた4剤併用が推奨療法として追加された。オランザピンはわが国でも複数の臨床試験が行われた。オランザピンは公知申請により2017 年6 月から,他の制吐薬との併用において成人では5㎎ を1 日1 回経口投与(患者状態により最大1日10㎎ まで増量可能),最大6 日間を目安として先発品と一部の後発品で保険下にて使用が可能となった。本邦における推奨用量,使用方法については未だ検証段階であるため,適切な患者に慎重に投与することが望まれる。慎重投与すべき患者としては,糖尿病患者ならびに高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者であり,使用に際しては副作用の傾眠や血糖上昇に十分注意する。高齢者への投与も慎重に行うべきである。作用点が重複するドパミンD2 受容体拮抗薬ドンペリドン,メトクロプラミド,ハロペリドール,リスペリドンなどとの併用は勧められず,また,睡眠薬との併用には注意を要する。投与量に関してはランダム化第Ⅱ 相試験ではあるが,高度リスク抗がん薬投与に対し3剤併用に加えたオランザピン5 ㎎ と10 ㎎では遅発期の悪心・嘔吐の制御において同等であったとの報告もある。