分泌刺激試験にはインスリン、CRH(コルチコレリン)、メチラポンなど、分泌抑制試験にはデキサメタゾンなどが用いられる。 ページトップへ戻る
クッシング症候群は、副腎(腎臓の上に左右1対存在する小さな臓器)から、ステロイドホルモンの一種である「コルチゾール」が過剰に分泌されることによって全身の様々な臓器に合併症を引き起こす病気です。正常の状態では、副腎のコルチゾールは脳下垂体から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)によって分泌が促進されます。コルチゾールは本来、生命を維持するために重要な、体に必須のホルモンですが、過剰になると身体にさまざまな異常が出てきます。
クッシング症候群の主な原因は、副腎や脳下垂体などに生じるホルモン産生腫瘍です。ステロイドを含む薬剤(飲み薬、塗り薬、吸入薬、点鼻薬、点眼薬など)を長期間使用した場合もクッシング症候群と同じ異常が出ます。
副腎皮質系機能検査 デキサメタゾン抑制試験 森 潤 東京医学社 小児内科 51巻 4号 (2019年4月) pp.459-460
下垂体に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を過剰産生する腺腫が発生し,結果として副腎皮質からのコルチゾール分泌が過剰となった結果,成人ではグルココルチコイド過剰症状(満月様顔貌,中心性肥満,伸展性赤紫色皮膚線条,皮膚の菲薄化や皮下溢血,近位筋萎縮による筋力低下等の症状)と高血圧,高血糖,骨粗鬆症などを認める。下垂体以外に発生する神経内分泌腫瘍(小細胞癌やカルチノイドなど)による異所性ACTH産生との鑑別が重要となる。
主要徴候を認め,1日尿中遊離コルチゾールが高値,血中ACTH濃度が正~高値,低用量デキサメタゾン抑制試験(わが国では0.5mg)において早朝安静時の血中コルチゾール濃度が5µg/dL以上であれば,ACTH依存性クッシング症候群と診断し,頭部MRIで下垂体に腫瘍を認めればクッシング病を強く示唆する。CRH試験においてACTH上昇反応を示す例が多く,MRIにて下垂体腫瘍を認めなくとも下錐体静脈洞サンプリングによる中枢性ACTH産生を証明すれば,クッシング病と診断する。径1cm未満の微小腺腫例が多い。しかし,稀ではあるが増殖能が強く巨大化するcrook cell adenomaやがん腫の例も報告されている。
Cushing 病のスクリーニング検査として、一晩少量デキサメタゾン抑制試験を行います。 ..
○ 概要
1.概要
下垂体から分泌されるADH、ACTH、TSH、GH、LH、FSH、PRLの単独ないし複数のホルモン分泌障害あるいは分泌亢進により、主として末梢ホルモン欠乏あるいは過剰による多彩な症状を呈する疾患である。病因は、下垂体自体の障害と、下垂体ホルモンの分泌を制御する視床下部の障害及び両者を連結する下垂体茎部の障害に分類される。実際は障害部位が複数の領域にまたがっていることも多い。
全ての前葉ホルモン分泌が障害されているものを汎下垂体機能低下症、複数のホルモンが種々の程度に障害されているものを複合型下垂体機能低下症と呼ぶ。また、単一のホルモンのみが欠損するものは、単独欠損症と呼ばれる。一方、分泌亢進は通常単独のホルモンのみとなる。
2.原因
汎ないし部分型下垂体機能低下症では、脳・下垂体領域の器質的疾患、特に腫瘍(下垂体腫瘍、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍など)、炎症性疾患(肉芽腫性疾患としてサルコイドーシス、IgG4関連疾患など、自己免疫性炎症性疾患としてリンパ球性下垂体炎など)、外傷・手術によるものが最も多い。分娩時大出血に伴う下垂体梗塞(シーハン症候群)の頻度は低下している。一方、単独欠損症はGHやACTHに多く、前者では出産時の児のトラブル(骨盤位分娩など)が、後者では自己免疫機序の関与が示唆されている。さらに抗PIT-1下垂体炎(抗PIT-1抗体症候群)など自己免疫で複合型の下垂体機能低下症をきたすこともある。まれに遺伝子異常に起因する例があり、POU1F1(PIT1; TSH、GH、PRL複合欠損)、PROP1(TSH、GH、PRL、LH、FSH複合欠損)、TPIT(ACTH)、GH1、GHRHR(GH)などが知られている。カルマン(Kallmann)症候群の原因遺伝子であるANOS1(KAL1)などの異常はLH、FSH欠損による先天性性腺機能低下症の原因となる。近年、頭部外傷、くも膜下出血後、小児がん経験者においても下垂体機能低下症を認めることが報告されている。
また、分泌亢進症に関しては、腺腫、上位の視床下部における調節機能異常などが挙げられる。
3.症状
欠損あるいは過剰となるホルモンの種類により多彩な症状を呈する。
4.治療法
基礎疾患に対する治療
原因となっている腫瘍性ないし炎症性疾患が存在する場合は、正確な診断のもとに、各々の疾患に対し、手術や薬物療法、放射線療法などの適切な治療法を選択する。
ホルモン欠乏に対する治療
下垂体機能低下症に対しては、欠乏するホルモンの種類や程度に応じたホルモン補充療法が行われる。下垂体ホルモンはペプチドないし糖蛋白ホルモンのため、経口で投与しても無効である。このため、通常、各ホルモンの制御下にある末梢ホルモンを投与する。GHやFSHのように、遺伝子組み換えホルモン等を注射で投与する場合もある。
以下に、ホルモンごとの補充療法の概略を示す。
コルチゾールの過剰によって生じる特徴的な外見や症状として、満月様顔貌(顔が丸くなる)、中心性肥満(腹部肥満)、首や肩周りの皮下脂肪増加、手足にあざができやすい、ざ瘡(にきび)、体毛の増加、腹部や大腿の皮膚の赤紫色の線(皮膚線条)、手足が細くなり筋力が低下するなどがあります。生理不順や無月経、不眠、うつ状態も見られます。
自覚症状がない合併症として、高血圧、血糖値の上昇(糖尿病)、コレステロール値の上昇、骨密度の低下(骨粗鬆症)、電解質異常(低カリウム血症、低リン血症)、緑内障や白内障、消化管潰瘍、血栓症などを認めることもあります。さらに、コルチゾールが多いと、通常は感染しにくい細菌や真菌、ウイルスに感染症し(日和見感染症)、重症化する場合があります(文献1)。
コルチゾールが過剰であるのにクッシング症候群に特徴的な症状が見られない状態をサブクリニカルクッシング症候群といいます(文献2)。
デキサメタゾンは、ヒドロコルチゾンに比較して抗炎症作用及び抗アレルギー作 ..
手術療法によって寛解に至らなかった例においては,下垂体腺腫のACTH分泌抑制(向下垂体)あるいは副腎皮質からのコルチゾール産生抑制(向副腎)治療を考慮する。向下垂体治療は向副腎治療に比べて奏効率は低いが,原因に沿った治療となり,著効例も報告されている。向下垂体治療として保険適用となっているものは5型ソマトスタチン受容体に作用する徐放性パシレオチドがある。有効例が多く報告されているが,インクレチン抑制による高血糖の副作用に留意する。保険適用外ではあるが,ドパミン作動薬であるカベルゴリンの有効例も報告されている。
治療は、下垂体腺腫、副腎皮質腺腫、癌異所性ACTH産生腫瘍に対しては、腫瘍の摘出を行う。下垂体腺腫が残存した場合は、下垂体照射、ガンマナイフなどを行う。そのほか、腫瘍摘出ができない場合は、シプロヘプタジン、レセルピン、ブロモクリプチン、バルプロ酸などのACTH分泌抑制薬あるいは、トリロスタン、ミトタン、メチラポンなどのステロイドホルモン合成阻害薬が用いられる。
デキサメタゾン抑制試験でコルチゾールが低下しない、など); 画像検査
クッシング症候群では前述のような特徴的な外見がみられますが、これらをきっかけに診断されることはまれです。多くは若年性や難治性の高血圧、高血糖(糖尿病)や高コレステロール血症、白血球増加の原因検索により診断に至ります。最近はCTやMRIで偶然見つかった副腎腫瘍をきっかけに診断される患者さんが増えています。
クッシング症候群を診断するための検査として、血液中のコルチゾールやACTH濃度の測定、24時間蓄尿中のコルチゾールの量の測定を行います。コルチゾール、ACTHの濃度を正確に評価するため、採血は午前中の早い時間に安静の状態で行う必要があります。さらに、コルチゾール濃度を早朝や深夜に測定したり、検査用の薬(デキサメタゾン)を内服した後に測定する検査も行います(文献3)
コルチゾールが病的に多いことが確認されたら、その原因を調べるため副腎や脳下垂体などの画像検査(CT検査、MRI検査、シンチグラフィなど)を行います。
クッシング症候群と診断されたら、コルチゾールの過剰によって生じる全身の合併症の有無を調べるための検査を行います。具体的には、血糖値やコレステロール、心臓や血管の検査、ウイルスや真菌、細菌などへの感染の有無を調べる血液検査、骨密度の検査、視野を調べる眼科検査などを行います。
副腎から分泌されるコルチゾールの分泌とその作用が過剰になり,特徴的な身体徴候とともに心血管,代謝,骨,皮膚,精神など全身の合併症をきたす。副腎腺腫からのコルチゾール過剰分泌を狭義のクッシング症候群と呼び,下垂体からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)過剰が原因となる病態をクッシング病(「クッシング病」の稿参照)として区別される。また,悪性腫瘍などに伴う異所性ACTH分泌や薬剤によっても同様の病態が生じる。
デキサメタゾン試験、メチラポン試験、ACTH刺激試験 画像診断:副腎の腫瘍がないかを調べるために超音波検査、CT、MRI
クッシング症候群を完治させる治療薬がないため、治療の第一選択は原因となる副腎や脳下垂体の腫瘍を手術で摘出することです。腫瘍が完全に摘出できればクッシング症候群は治癒します。完全に摘出できない場合でもコルチゾール過剰による症状や合併症を軽減・予防するため、腫瘍減量手術(デバルキング手術)を行う場合があります。
手術ができない場合や手術で腫瘍がとりきれなかった場合は、薬の治療(薬物治療)、放射線治療などを組み合わせて追加治療を行います。
大量デキサメタゾン抑制試験は高用量のデキサメタゾンを投与した際の ..
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クッシング症候群、デキサメタゾン抑制試験についてまとめました#病態・薬物治療#クッシング症候群#デキサメタゾン抑制試験.
ACTH抑制療法が困難な場合は,向副腎治療への変更あるいは併用を試みる。わが国では,メチラポン,トリロスタン,ミトタンが保険適用となっている。そのうち,即効性で奏効率の高い11β脱水素酵素阻害薬のメチラポンが最も用いられる。3βヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害薬のトリロスタンは効果発現が緩徐で奏効率が低い。ミトタンは効果発現に1カ月以上を要する。長期内服で副腎皮質に不可逆的変化をもたらし,生涯のHC補充が必要となるため,「薬物的副腎摘出術」とも言われる。ミトタンによってHCの半減期が短縮するため,併用時はHCの増量を要する場合がある。ろれつ不全など中枢神経系の副作用を認める場合があるため,注意深く観察する。
デキサメタゾン抑制試験, CRH試験, DDAVP試験などの内分泌検査とMRIを用いた画像 ..
コルチゾールの慢性分泌過剰状態が存在し、それにより高血圧および満月様顔貌、中心性肥満、皮膚線条、多毛などの特徴的な身体所見を呈する。
CRH負荷試験、8mgデキサメタゾン抑制試験はCDの診断基準に従った。頭部MRI画像診.
手術前に体内のコルチゾールを低下させる必要がある場合、手術で腫瘍がとりきれなかった場合は、メチラポン(メトピロン)やオシロドロスタット(イスツリサ)などの飲み薬を用いて治療を行います。脳下垂体ACTH産生腫瘍の場合はACTHを低下させる注射薬(パジレオチド;シグニフォーLAR)を用いることがあります。
コルチゾール過剰による合併症の対策のため、クッシング症候群の治療と並行して、必要に応じて日和見感染症予防や電解質調整、骨粗鬆症予防などの薬剤治療を行います。
副腎がんや異所性ACTH産生腫瘍が悪性の場合は、抗がん剤も含めた様々な方法で治療を行います。
クッシング症候群の病態生理、治療薬、注意点 | 薬学まとめました
オーバーナイト1mgデキサメタゾン抑制試験で,翌朝のコルチゾールが抑制不十分(3mg/dL以上)。コルチゾールの日内変動消失(夜間血中コルチゾールが3mg/dL以上)。腹部CTで副腎腫瘍,131Iアドステロール副腎シンチグラフィーで同部位に集積,典型的には健側副腎が萎縮する。
薬剤師国家試験 第98回 問163 過去問解説 | 薬学まとめました
デキサメタゾンの内服の方法には様々なやり方がありますが、慶應義塾大学病院では一晩法を採用しています。一晩法では、深夜23時に低用量の場合はデカドロン®1mg(2錠)、高用量の場合は8mg(16錠)を内服していただきます。そして、翌朝の8時~9時頃に血液検査を行い、コルチゾール濃度が低下するかどうかを検査します。入院中にこの検査を行う場合は、同時に蓄尿(ちくにょう)検査(24時間に排尿した尿をすべてバッグに貯める検査)を行って、尿中のコルチゾール濃度を参考にすることもあります。
尿中に検出される代謝物は、主として遊離型メチラポンと還元型メチラポンのグロクロン酸抱合体
向副腎治療は下垂体腺腫に対して直接的効果はなく,むしろ腫瘍増大(Nelson症候群)の可能性を含むため,画像診断による注意深い経過観察が必要である。副作用などで向副腎治療が困難な例では,両側副腎摘出術を行い,生涯のHC補充を行う。その際も,Nelson症候群の発症について,注意深い経過観察が必要である。
Cushing(クッシング)症候群〈Cushings syndrome〉
腫瘍が完全に摘出されればクッシング症候群が治癒しますが、体内のACTH、コルチゾールの分泌状態が正常に戻るまで約1~1年半を要します。その間、少量のステロイドの補充療法が必要です。補充療法用のステロイドには主にヒドロコルチゾン(コートリル)の飲み薬が用いられます。ACTHとコルチゾールの分泌状態の回復を血液検査で定期的に確認しながら、ステロイドの内服量を段々と減らし、最終的に補充療法を終了します。
腫瘍のタイプによっては再発する場合があるため、手術後も定期的な検査が必要です。
内分泌検査では、尿中遊離コルチゾール、17-OHSCの排泄量増加、血漿コルチゾール日内変動の消失を認め、少量デキサメタゾン ..
副腎におけるコルチゾールは、下垂体(かすいたい)から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の指令に従って作られています。そして、ACTHとコルチゾールは早朝から午前中にかけて高値ですが、夕方から夜間は低値となり1日の中でも時間による変動(日内変動)があります。本検査でデカドロン®を内服すると、翌朝の血液中のACTH濃度は正常の場合にはほぼ完全に低下して、副腎への指令がなくなるために、副腎で作られるコルチゾール濃度も非常に低い値となります。しかし、クッシング症候群では、デカドロン®によりACTHを低下させても、副腎腫瘍からは依然としてコルチゾールが作られるために、翌朝の血中コルチゾール濃度が高い値となることで診断しています。
ACTH分泌亢進症:ステロイド合成酵素阻害薬(メチラポン、オシロドロスタット ..
根治をめざした副腎腫瘍の摘出が原則である。副腎皮質癌が疑われる場合は,手術時の腹膜播種を避けるため開腹術が望ましい。片側副腎摘出後,健側からのコルチゾール分泌の回復に時間がかかる(通常6カ月以上)ことが一般的であり,その間グルココルチコイドの補充が必要である。コートリル®(ヒドロコルチゾン)を,症状に応じて補充し,徐々に減量・中止していく。減量時には関節痛などにより術前よりQOLが低下しうるので注意する。早急に血中コルチゾール濃度を低下させるべき重症例,手術不能例,不完全な腫瘍摘出例,再発例,副腎癌の転移などではコルチゾール合成阻害薬を使用する。
主要徴候を認め,1日尿中遊離コルチゾールが高値,血中ACTH濃度が正~高値,低用量デキサメタゾン ..
クッシング症候群では、過剰なコルチゾールが様々な臓器に悪影響をもたらします。国立国際医療研究センター病院の内分泌・副腎腫瘍センターでは、こうした合併症の総合的な診断・治療のため、消化器内科・呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科・感染症内科などの内科系診療科、整形外科、皮膚科、眼科、精神科といった多くの専門診療科との連携を行い、質の高い医療を提供します。
当院内分泌内科では初回のスクリーニング段階よりから対応することが可能ですので、クッシング症候群疑いと判断された時点で、まずは当センターまでお気軽にご相談ください。必要に応じて、機能確認検査目的の検査入院を提案します。
また、外科手術が必要な症例では、高度な技術を必要とする症例に関しても、外科や泌尿器科、麻酔科と合同で治療方針を吟味しつつ、適応がある症例には積極的に手術を行っています。当センターでは、手術を安全に行うための術前の専門的な検査・治療を行っているほか、手術後にもきめ細かなフォローアップ、ご紹介いただきました医療機関への経過報告を行っております。
診療のうえで下記のようにお困りの症例がございましたら、窓口の「内分泌内科 紹介外来」もしくは「内分泌内科 セカンドオピニオン」までお気軽にご相談ください。
メチラポン ≥98% (HPLC), solid; CAS Number: 54-36-4; EC Number: 200 ..
デキサメタゾン抑制試験は、クッシング症候群(「」の項参照)が疑われた場合に行う検査で、デキサメタゾン(商品名:デカドロン)は副腎(腎臓の上にある小さな内分泌臓器)で作られるコルチゾールの作用を強力にした内服薬です。